夜学バーの従業者

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尾崎昂臣(2024.11.24)
まちくた(2024.12.3)
saku(工事中)
モエ(工事中)
みつきち(2024.11.24)
小林カモメ(工事中)
田中(工事中)
※カッコ内は最終更新日
<従業者について>
 夜学バーには開業当初から複数の従業者がほぼ常におります。小さなお店ゆえ原則「ワンオペ」で、その人がお店の空間づくりを一手に担います。
 最初期のメンバーを除いておおむね全員が「もとはお客さんだった」人たち。「このお店が好きだ」という気持ちがまずあって、「このような空間・時間を自分でも作りたい」と思ってくれた人たちに働いてもらっています。こちらから声をかけることは極めて稀で、「やってみたい」と打ち明けられるか、そのような態度がにじみ出た結果として「じゃあやる?」となることがほとんど。
 ゆえ、彼らには「夜学バーっぽい空間づくり」を要求します。すなわち、店主がふだんやっているようなことをめざしてもらいます。でなければこのお店で働く意味はありません。よほど売上を立てないと稼ぎにならない(一番最初にそこは念を押します)し、ただ自己実現がしたいならべつにほかのバーとかでいいだろうと思うからです(そう言ってお断りしたケースが実はけっこうあります)。たまたま近くにあったのが夜学バーだった、ていどではなく、「ここじゃなきゃダメなのだ」と強く思う人を雇ってきたつもりです。
「夜学バーっぽい空間づくり」ってのは一体どういうものか? 言うまでもなく、僕がこのホームページ等に書きまくっている諸々のこと。それは僕の人格や能力によってできあがっているものでもあるのですが、よく読んでもらえばご理解いただけると信じますがある程度は「技術」であって、それなりに再現性があるはず。従業者たちには折に触れ伝授しております。
 ただ注文を受けてドリンクを提供して、なんとなく思いつきで応対をする、という無軌道な留守番バイトではなくて、「ある方針にのっとった技術」を自分なりの形で会得しようと努める修行者のようなもの。徒弟制度に近いと僕は思っています。

 実のところ、数年前までは「無軌道」を許しておりました。自由にやらせとけばだんだん「自分なりのやり方」を見つけ、磨き上げ、やがて「他のどこにもない魅力的な空間」が創り出せるだろう。僕と同じことをする人ばかりじゃつまらない、そもそも不可能なのだ。店主とは違う個性の日があるからこそ全体として面白いお店になるはずだ。そのように考えていたわけです。
 しかし何年かそれで運用してみると、あんまりうまくいかないとわかりました。上記は、飲食で独立しようとする人に求めるやり方なのです。しかも飲食店の独立なんてのはそう簡単なもんではなく、数年以内で立ちゆかなくなって閉まるお店がほとんどだそうで。データによって違うようですが「3年以内に7割が閉店する」といった数字をよく見聞きします。
「自由にやって」で成功できるのは、すでにその才能の開花している人だけなのです。僕はたぶんそうだったので、23歳くらいから週1で間借りのお店を始めて、ずっと楽しくて、いつの間にかお店を持っていたりしたわけです。それを誰しもに求めるのは無理がある。これに気づくまでは「自分のやり方を人に押しつける」なんて考えたこともなかったのですが、「ちゃんと徒弟制度にしないとダメだな」と改めたのでした。
 また、言い方は悪いかもしれませんが、自由にやらせているとやっぱり、水は低いほうに流れるものというか、「ありきたりな空間」になってしまいがちなのです。なぜありきたりなものがありきたりになるのかというと、それが「無難」だからで、「無難」ってことは「持続可能性が高い」ってことだからなのです。
「持続可能性が高い」ってことは「比較的楽だ」ということでもあります。何も考えなければ人は楽なほうをとりますし、呪われたことにそれは持続しやすいのです。たとえば週に1日の営業であれば、囲いのような常連を何人かつくって毎回来てもらって、毎回似たような雰囲気で似たような話をして、新たなお客に対しては「この輪に入れるなら入っていいけど、入れないなら二度と来ないでね」くらいの態度で接する(そんな鬼のような店があるのか? 被害妄想かもしれませんが、あるような気がします)などすれば、楽で、持続的なわけです。でもそれは平凡で、絶対に夜学バーで僕がやりたいことではないのです。大げさにいえば、放っとくとそういうふうになってしまいかねません。
 平凡ってのは変化に乏しいってことで、小さなお店であればそれは閉鎖的ってこと。夜学バーは柔軟で流動的で、開かれたお店にしておきたいので、楽で持続的な平凡に歯を食いしばって背を向けているのであります。

 夜学バーで働いてくれている人たちは、そのような面倒なことを引き受けてくれているわけです。なんという素晴らしい人材でしょう! その時点で。すごいと思うし、本当にありがたい。
「夜学バーが好きで、自分もその空間をつくったり維持することに一役買いたい」という志をたぶん、みんな持ってくれています。そして「そのことが自分に利をもたらす」とも思ってくれています。徒弟と言ったら大げさですが、ある程度夜学バー的な「技術」を習得することは、どこかで自分の役に立つはずだとみんな思ってくれているのでしょう。それで遠慮なく「夜学バーのような空間はどうしたらつくれるのか」ということを、改めてよく熟考して言語化して、嫌われる覚悟さえ持って伝えております。折に触れて。
 しかし、もちろん、僕は「ジャッキーさん(店主=僕)のコピー」を作ろうとしているのではありません。各従業者のリンク先をお読みくださいませ、みなすでに十分アクの強い個性者ばかり、コピーになんてできっこなし。まったく僕とは違う生き方と存在感の人たちで、でも「夜学バーが好きだ」ということで繋がっているので、「じゃあこの技術をぜひ使ってみてください」という形で、伝授ということをしているのみです。
 僕は夜学バーに関しては職人だと自認しております。営業スタイルにおいて決して芸術家ではありません。僕は自分の中にある芸術方面の個性を人に押しつけようとはまず思いません。職人方面の個性、すなわち技術なるものであれば、使うも使わないも場面に応じて決めるだけなので、習得して損はなかろうと思って、それをします。むろん僕は馬鹿でないゆえ、それによって相手の価値観に影響を与えないわけがないとは承知しております。そのくらいの洗脳は許してネ。だってすでに夜学バー好きだってんだからしょうがないじゃないかァ!

 冗談はさておき。みんなはいろんな思惑で働いてくれているはずで、その中身は僕にもわかりません。ひとまず各従業者のリンク先と、実際の営業風景を体感するしかないでしょう。店主が提供する「夜学バー」とは違うものにはなると思いますが、彼らなりに考えて工夫して、悩みながら一所懸命やってくれています。ちょっとでも興味を持ったら、ぜひ一度ならず二度、三度、定点観測においでいただけると実にありがたく存じます。(2024/11/25)

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